攻撃を加速させる2つの武器
エースを務めるアシュラフ・ヌーマンはパレスチナ代表の勝敗を大きく左右する存在だ。ただ、攻撃面に関してだけだが。
守備時はまったく走らず、センターサークル付近をふらふらとさまよっているだけである。
だが、ひとたび攻撃に移れば動きの質が飛躍的に向上する。神出鬼没な動きで相手ディフェンスラインの裏に飛び出してゴールを陥れるだけでなく、ドリブルやラストパスで違いを作る。
AFCチャレンジカップでは5試合で4得点を挙げて大会得点王に輝いた。この活躍でサウジアラビアのクラブへステップアップした大エースはパレスチナ浮沈の鍵を握っている。
もう一人、注目すべき若手選手がいる。背番号14、アブドゥラー・ジャビルだ。昨年主力に定着し、今大会も左SBを務めることが濃厚な21歳を『フットボール・パレスチナ』も「彼一人の力で左サイドの問題を解決した」と絶賛している。
プレースタイルは“パレスチナの長友佑都”といったところだろうか。守備技術にはまだ改善の余地を残しているが、守備から攻撃への切り替えが素晴らしく、マイボールになった瞬間左サイドを猛然と駆け上がっていく。
攻撃に積極的に絡み、ドリブルで相手陣内深くまでえぐって鋭いクロスを供給したり、中へ切り込んでシュートを狙ったりする姿はどこか長友に重なる部分がある。
2人の他にも中盤の底からゲームを組み立てるムラド・サイードや、AFCチャレンジカップを無失点に抑えた守護神のラムジ・サラーといったベテランたちが経験の乏しいチームを支えている。