攻守にわたって不安定も、一発の脅威が
パレスチナ代表の戦術はいかにも中東の国らしいものだ。しっかりと引いてブロックを作り、低い位置でスペースを消してボールをからめとり、奪ったところから長めの縦パスを多用して一気に相手ゴールに襲い掛かるというカウンターがメイン戦術となる。
ただ守備のクオリティが高いとは言えない。相手のボールホルダーに対する寄せが甘く、自陣で簡単に前を向かれてしまったり、プレーの選択肢を限定できなかったりする場面が多く見られる。
複数人でボールホルダーを囲んでも、それぞれが独立して動いてしまい、組織的な守備が成り立っているとはいいがたい。
AFCチャレンジカップに出場するレベルのチームであれば、多少守備が緩くとも、攻撃の精度も高くはないので問題にはならないが、アジアのトップクラスを相手に自由にやらせてしまえば失点は免れない。
攻撃面では速攻の局面で大きな力を発揮する一方、遅攻になると判断が遅れがちになり、中盤のパス出しで出しどころを迷う場面が見られた。
攻撃的なポジションの選手たちは皆ドリブルでの打開力も備えており、速攻の流れからオープンスペースで前を向いた状態でボールを受けさせてしまうと非常に危険だ。
日本がパレスチナの速攻を防ぐには、最初のパスを出すCBに対して自由にボールを蹴らせないよう攻撃から守備への切り替えを迅速に、かつ正確にプレッシャーをかけることが必要になる。
攻撃のスイッチを入れるCBからのビルドアップを遮断すれば、相手の攻撃を大幅に遅らせることができ、威力は半減する。
しかし、パレスチナには“一発”がある。エースストライカーのアシュラフ・ヌーマンは、AFCチャレンジカップの決勝・フィリピン戦で直接FKを決めており、確実に枠を捉える精度の高い右足を持っている。ペナルティエリア付近で不用意なファウルを与えるのは避けなければならない。