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【佐山一郎×後藤勝 “サッカー狂”特別対談】フットボール・ライティングの地平線 第3回「記事になった原稿は、すべて本になることを目指さないとダメ」

老舗サッカー誌が1つ、2つと姿を変え、サッカーメディアのありようも大きく様変わりしつつある。移ろいゆく時代の中で、この国のフットボール・ライティングはどこに向かうのだろうか? 「サッカー本大賞」の選考委員長でもある作家・佐山一郎氏とライター・後藤勝氏の対談を3回にわたってお送りする。

text by 後藤勝 photo by editorial staff

【第1回】 | 【第2回】

電子書籍にする意味

後藤 『闘技場の人』や『サッカー細見』から刊行が始まる新シリーズ『サヤマ・ペーパーバックス』(※1)は、サッカー関連の本だけではないんですね。

佐山 最初が『闘技場の人』になったのは、編集担当がこれをぜひ復刊したいと言ってくれたことが出発点ですけど、そのほかの本も準備を進めています。復刊に際しては補筆や修正の作業があるのですが、これがまさにソウル・サーチング(自己省察)。がんばらないとなぁ、という気持ちになります。シリーズが揃うことで、サーチできることも増えていくのではないかと。

 このシリーズでは電書と紙書籍を同時に出版しますが、まだまだ電書に馴染みのない、もっといえば嫌いなひとも多い。僕の同世代だとなおさらです。でも高齢化が進むにつれて文字を拡大して大きな字で読みたい老眼の人たちが増えてくるから電書のニーズは高まるはずです。現時点ではまだ紙の書籍がいいという人のほうが多いけど、紙の本の処分が必須要件の「終活」と電書の相性は悪くない。天国と電脳のクラウド(雲)も似たような場所のはずです(笑)。

【佐山一郎×後藤勝 “サッカー狂”特別対談】フットボール・ライティングの地平線 第3回「記事になった原稿は、すべて本になることを目指さないとダメ」
後藤勝氏に土下座感のあるお礼を述べる佐山一郎氏【写真:編集部】

後藤 やっぱり紙のほうが読みやすいんでしょうかね。電書で安く読めるのに。

佐山 電書で買いはしたものの、結局書籍が欲しくなってさらなる出費になってしまったというのがこちらとしては理想形なんだけど(笑)、そこまでドジな人はいないです。まあそれはさておき、35歳以下の人は僕のことを知らないと思うし、もう入手が難しい本だってある。より手に届きやすいように電書で再刊していく意味はあると思っています。

後藤 紙の本は「絶版」があるので、のちの世代に伝わっていかないということもありますね。

佐山 そう。電書やPODは「在庫」や「絶版」がない世界だから、伝えるための第一歩は踏み出せる。それに、ただ再刊するだけではなくて、一冊目の『闘技場の人』は宇都宮徹壱さん、『サッカー細見』では後藤さんに「解説」をこきおろし、違った、書き下ろしていただきました。新しい読者から発見してもらうキッカケになれば、ということで、ありがとうございました。

後藤 いえいえ。こちらも1998年前後のサッカー界を振り返る作業ができてありがたかったです。

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