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【佐山一郎×後藤勝 “サッカー狂”特別対談】フットボール・ライティングの地平線 第1回「毒にも薬にもならないテクストばかりになってしまった現在」

text by 後藤勝 photo by editorial staff

ライターは本当の意味で時代とシンクロしているか?

後藤 就活を機会に新入社員が『日経』を読みはじめるパターンが、かろうじてありそうなくらいですか。

佐山 そういえば、古い付き合いのデザイン事務所の社長が「仕事場にせっかく新聞を各紙取り揃えても、スタッフが誰も読まない」と怒っていた。

 僕は、『東京新聞』夕刊で80年以上続いてきた名物コラム『大波小波』のファンなんです。そこだけ一年間スクラップして、俎上に載せられた本や各種芸術作品を買わなくてもいいから図書館で読んだり観たりしたら、書き手としての力がつくと思いますよ。自分が大学の文芸講座をやるのであれば、それだけは強制すると思います。

 同時代と本当の意味でシンクロしているのかということをライター自身が自省する必要もあるんじゃないかな。あまりいいたくないけど“癒し”とかいってるうちに、いつの間にか毒にも薬にもならないテクストばかりになってしまった面はあると思います。

 最近は礼儀正しく明朗に相手を叩くというテクニックで池上彰さんが尊敬を集めているわけだから、その辺に現状打開のヒントがあるのかも。悲憤慷慨むきだしでぶっ叩いても埃は出ない、そんな時代なんだと思います。

【第2回に続く】

サッカー本大賞
「高品質なサッカー書籍こそが、日本のサッカー文化を豊かにする」というスローガンのもと創設された。2015年2月11日(水)には「サッカー本大賞2015」の大賞受賞作が発表される。昨年発表された「サッカー本大賞2014」は大賞を『ボールピープル』(文藝春秋)近藤篤 著、翻訳サッカー本大賞を『理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人』(学研教育出版)ジャンルカ・ヴィアリ、ガブリエル・マルコッティ著/田邊雅之 監修が受賞。

<プロフィール>

佐山一郎
1953年3月7日生まれ。東京都目黒区出身。作家、編集者。成蹊大学文学部卒業後、オリコンのチャートエディターを経て流行通信に入社。1980年代前半よりアンディ・ウォーホルズ『Interview』の提携誌だった月刊『Studio Voice』編集長のかたわら、ノンフィクション短編、ラジオ、テレビ出演、新聞、雑誌における新刊評、コラムなどの執筆活動を始める。1984年からフリー。サッカーを中心とするスポーツライターでもある。哲学者森有正(1911‐1976)、ファッションプロデューサー石津謙介(1911‐2005)の長年にわたる研究者。主著書に半自叙伝『雑誌的人間』(リトルモア)、『デザインと人』(マーブルトロン)、批評的啓発書『ブレない「私」のつくり方』(山城パブリッシング)、長編バイオグラフィー『VANから遠く離れて 評伝石津謙介』(岩波書店)、本邦初のオール・サッカー本書評集『夢想するサッカー狂の書斎‐ぼくの採点表から‐』(カンゼン)など。共著に『「花子とアン」のふるさとから‐夫婦で歩く馬込文士村ガイド‐』(インプレスR&D)など。サッカー本大賞選考委員長。

後藤勝
サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」(http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン)がある。

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