クラブ史上、最も堅い守備陣を支えた東口
「MVPは東口」。リーグ戦で優勝を飾った直後の記者会見で、長谷川監督は迷わず言い切った。
それもそのはずだ。歴史に残る猛追を見せた7月以降の戦いで、背番号1が見せたパフォーマンスはまさに「守護神」という肩書きに相応しいものだったのだから。
もっとも、「日本一のGKになる」と決意して挑んだ今季序盤は、チームへのフィットが遅れ、凡ミスも見せた東口。徳島の地でチームメイトが歓喜にむせぶ中、見せた涙は「シーズン序盤はキツかった。そんなことを考えていたら涙が出た」。そんな背番号1は、移籍が間違いではなかったことを自らの両手で証明してみせる。
コーチングやフィード、足下の技術などGKに求められる要素は多様だが、東口が最も自信を持つのは「自分の持ち味はシュートストップ」。一聴すると当たり前のように聞こえるこんな言葉の有り難みを、チームはリーグ戦終盤の戦いで噛み締めたはずだ。
10得点以上の働きを見せた宇佐美の輝きや、キャプテンとしてチームを牽引した遠藤に勝るとも劣らない輝きを、守護神が見せたのは28節のホーム川崎戦である。1点という最少得点差のままもつれ込んだ試合終盤の80分、万博記念競技場に「神」が舞い降りた。
完全に守備陣を崩され、ゴール前で小林がフリーでシュート。「やられたと思った」と指揮官が痛恨の同点弾を覚悟した瞬間、東口は左手1本でワンハンドセーブ。至近距離からの一撃を、弾くことなく、左手一本で抑えてみせたのだ。
勝ち点3をゲットするのと、勝ち点1にとどまるのでは天国と地獄―。「長丁場のリーグ戦を勝つにはGKの安定感が不可欠」と東口の獲得意図を語っていた指揮官の思惑通り、夏場以降は終始安定したパフォーマンスを発揮。クラブ史上、最も堅い守備陣を最後尾から引き締め続けた。
GKで勝つ―。大阪の雄に新たなゲームパターンが加わった2014年シーズンだった。
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