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代表 10年前

「オセアニアに戻ろう」? サッカルーズを取り巻く諦念と過信

text by 植松久隆 photo by Getty Images

“ケーヒル依存症”に悩む攻撃陣

 残りの7、8名の人選は非常に流動的ではあるが、ここでもやはり選考の基準は「ユーティリティ性」が重視される。その意味では、持病の腰痛の回復次第での選出が取り沙汰される前述のケネディの復帰の目は低い。日本でもお馴染みの彼は、高さを生かして前線で体を張る典型的なセンターFWで、他のポジションでプレーできない。

 現時点でのケーヒルの控えの最有力候補は、将来を嘱望される本格派FWであるトミ・ユリッチ(ウェスタン・シドニー)。ユリッチは23歳と若く、ポスタコグルー監督としても国際大会の経験を積ませたいという気持ちもある。ケーヒルが今大会後の代表活動に関しての明言を避けている今、けがからの復帰途上のケネディよりはユリッチを選ぶのが順当だろう。

 ケーヒル、ユリッチの最前線にボールを供給する左右の両ウィング候補には人材が揃った。ブラジルW杯を直前のけがで棒に振ったロビー・クルーズ(レバークーゼン)は外せないし、センターFWでもプレーできるマシュー・レッキ―(インゴルシュタット04)、さらには“ハリー・キューウェル2世”と期待されるもケガに泣いてきた快速ウィングのトミー・オアー(ユトレヒト)も復活気配。

 さらには、前線だけではなく中盤のプレーメーカーもできるジェームス・トロイージ(ズルテ・ワレヘム)、Aリーグの得点王ランクの首位を走り、久々の代表復帰を狙う絶好調のネイサン・バーンズ(ウェリントン)なども控え、人材には事欠かない。ゲームメーカのポジションは、マーク・ブレッシャーノ(アル・ガラファ)と成長著しいマッシモ・ルオンゴ(スウィンドン・タウン)に加えて、前述のトロイジで駒は揃う。

 これらの攻撃陣の課題は、とにかく「ケーヒル以外が得点できない」という事に尽きる。対戦側にしてみれば、ケーヒルに徹底マークで仕事をさせなければ、それだけで失点の確率が格段に下がるわけで気分的に非常に守りやすい。

 豪州は、相手ディフェンスに精神面でも優位に立たれないためにも、ケーヒル以外の攻撃陣が相手にとっての最大の脅威であるケーヒルの存在を囮に使って、自らが積極的に仕掛けてチャンスを確実にしとめていく―言うなれば、“ケーヒル依存症”を逆手に取るような攻撃が必要となってくる。

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