三冠の立役者であるパトリック。その功績はゴールだけではない
もっとも、守備戦術の構築には絶対の自信を持ち「守備を整えるのはそんな難しくない」と公言し続ける長谷川監督がチーム作りにおいて唯一、自らの手が及びにくいと悩むのがゴール前の精度だった。
「攻撃は水物。取れているかと思うと、パタリと止まる。最後の部分はタレントの資質に掛かって来るから」(長谷川監督)
だからこそ、中断期間に唯一強化部にリクエストを出していたのは宇佐美と並ぶもう一つの得点源の確保だった。「Jリーグ経験者しか選択肢に入れていなかった」というリストから選んだのがパトリックだった。
その選択が間違いでなかったことはもはや語るまでもないだろう。宇佐美に次ぐ9得点をマークした無骨なブラジル人アタッカーは、攻撃面では相手DFラインを押し下げ、宇佐美や2列目のランプレーヤーに広大なスペースをもたらし、守備面でも「パトが前でタメてくれるので、押し上げる時間が作れる」(丹羽大輝)と語るように、抜群の機能性を発揮したのだ。
得点数の多さも、失点数の少なさもいずれもリーグ2位。得失点差が最多で今季最もバランスが取れていた大阪の雄。昇格して即三冠という前代未聞の偉業は、決して一朝一夕でチームを作り上げてきたわけではない。
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