「苦しい財政事情のなかで最大限の評価をしていただけた」
リーグ終盤、中央大は監督交代に踏み切る。指揮を執った佐藤健総監督は、自分を押し殺し、フォア・ザ・チームに徹した渋谷の振る舞いを非常に高く評価した。
「僕は大学サッカーを経験できてよかったと思います。カルチャーギャップに苦しみ、サッカーの面ではうまくいかないことが多くありましたが、有意義な4年間を過ごせました。組織のなかで個はどうあるべきか。ピッチ外のことを含め、人間的な部分で磨きをかけられたと感じます。ヴェルディにずっといたら、わからないことだらけでした」
さて、新人がクラブと締結するプロC契約は、基本報酬480万円(年)に支度金380万円の計860万円が上限とJリーグ規約に定められている。だが、財政状況の厳しいJ2以下のクラブでは、基本報酬120万円(年)、さらに下回って60万円(年)、それに微々たる支度金という提示が珍しくない。
「今年、就活をせずに1年間サッカーで勝負する。それをプロの方から評価してもらい、進路を決めるつもりでいました。一応、報酬の額にも基準を設けていて、バイトでも稼げるような額、つまりプロとして評価を受けられないのであれば、サッカーの道はあきらめよう、と。
実際、オファーの中身を見て、自分にこれだけ出してくれるんだと感謝の気持ちでいっぱいになりました。苦しい財政事情のなかで、最大限の評価をしていただけたと思います」
ユニフォームの背中のネームはどうするのだろう。苗字の「SHIBUYA」、あるいは呼び名として定着する「RYO」という手もある。
「SHIBUYAと入れてもらいます。そのほうが家族が喜ぶと思うので。契約が決まり、父は相当うれしかったと思うんですが、僕の前ではあまりそういう態度を見せません。まあ、だいたい想像がつくのでいいんですけどね」
渋谷はこれまで世話になったすべての指導者に連絡し、感謝の気持ちを伝えたそうだ。
「皆さんから励ましの言葉をいただいて……いや厳しい言葉のほうが多かったかな。『わかってると思うけど、プロは甘くないよ』と。気が引き締まります」