東京ヴェルディへの加入を決めた渋谷と大木
12月9日正午、待ち合わせは小田急線の成城学園前駅。渋谷亮(中央大4年)は約束の時刻ちょうどに姿を現した。改札出口の周辺地図を眺めていた僕は、最初に所属した砧少年サッカーチームが練習をしていた小学校はどこなのか訊ねた。
「えっと、ここですね。砧小。駅から歩いて15分くらいです」
予定にはなかったが、どこかで写真をおさえたいと考えていた取材者にとっては僥倖である。「行ってみますか?」という渋谷の言葉に甘えさせてもらい、散歩がてら足を延ばすことになった。
駅の近くは日本有数の高級住宅街だ。右も左も豪勢な一軒家が建ち並ぶエリアを抜け、緩やかな坂道を下る。砧町に入ると、途端に庶民的な街並みに変わった。目的地の世田谷区立砧小学校は、ごくありふれた学び舎である。
小さな校庭では体育の授業が行われていた。近年、どの学校も部外者の立ち入りを厳しく制限しているが、校門をバックに写真を撮るくらいなら構わないだろう。渋谷は、砧少年サッカーチームが輩出した初のプロ選手ということになる。
12月4日、東京ヴェルディは渋谷と大木暁(駒澤大4年)の来季加入を発表した。
「正式にオファーをいただいたのは、関東大学リーグの最終日(11月16日)です。試合会場で山本佳津さん(東京ヴェルディトップチーム部部長)とお会いして、聞かされました。うれしかったですね。それまでも前向きに検討していると伝えられていましたが、一時期はヴェルディのJ3降格危機で、先行きが不透明になっていたので」
その前日、東京ヴェルディはザスパクサツ群馬と引き分けてJ2残留を決め、中央大は筑波大を2-1の逆転勝利で下し、1部リーグ残留を決めた。渋谷にとっては幸多き一日となった。