本田を苦しめるイタリアの特質
受け手となる本田にも、アントネッリが張り付いた。ウディネーゼ戦のドミッツィは、フェイントを織り交ぜて裏を取る本田の動き出しに翻弄されていたが、アントネッリは本田が動くところへ張り付いて並走してきた。
ボールのなかったところで両者は時折小競り合いをしていたが、そんなふうにマークに付かれては、後方の選手もおいそれとパスを出せなくなる。
もちろん、FWやMFとの連係も寸断された。ジェノアのCB陣は“ニセ9番”のメネズに対しても対策を練っており、1対1の場面を作らせずスペースを消し続けた結果、彼はこれまでの“持ちすぎなドリブラー”に戻った。
もちろんモントリーボから本田へのパスコースも寸断されていたし、さらにモントリーボはプレッシャーを嫌がって前に出てしまうので、中盤は余計に空いてしまった。
というわけで、本田自身が「手ごたえを感じた」と語ったウディネーゼ戦の動きは、次節には早くも研究されて手を打たれた。ジェノア戦後に本田は「最悪の出来」と地元紙で酷評されたが、実際には酷いボールロストを連発しピンチを招いた試合は他にある。ただ自身へのパスを切られ、チャンスに絡めないようにされたことは確かだ。
プレーの質を上げたら、次の相手はさらにその上を行くべく対策を練ってくる。これが守備の厳しいイタリアサッカーの特質である。ましてはジェノアのガスペリーニ監督は、攻撃サッカーの使い手であると同時に、戦術的対策でも定評のある優秀な指揮官だ。
インテル、パレルモを経て古巣に戻ってから2年目、戦術的な完成度が高まった今のチームについて「かつてミリートやT・モッタがいた時代よりも強い」と豪語し、今シーズンはユベントスに唯一土もつけている。そういう相手を前に発展途上である今のミランが止められ、本田がゴールに行けなかったこと自体は、それほどスキャンダラスなことではない。