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香川真司 10年前

決死の覚悟だったドルトムント。久々勝利に見えた“安堵感”と“復活感”。そこに香川の姿なく…

text by 本田千尋 photo by Getty Images

輝いたフンメルス。復活した「ウェンブリー・ライン」

 そして、この試合で際立っていたのがフンメルスである。11月1日のバイエルン戦以来の先発となったフンメルスは、いよいよ本来の調子を取り戻しつつあるようだ。白いキャプテン・マークを腕に巻いて、DF陣を、ひいてはチーム全体を引き締める。

 2013年の5月にCLの決勝を戦ったフンメルス、ピシュチェク、スボティッチ、シュメルツァーの「ウェンブリー・ライン」は安定したパフォーマンスを見せた。62分、CKからフンメルスは渾身のヘッドを見せる。相手GKのバウマンに阻まれたが、それは今季のこれまでの不振を吹き飛ばすかのようだった。

 69分、フンメルスからラモスに一本の縦パスが入る。一直線の軌道を描いたパスを、ラモスは着実に収めた。ラモスとフンメルス。対ホッフェンハイム戦で最高のパスで、この試合のBVBを象徴するパスだった。

 試合は17分のゴールが決勝点となった。オーバメヤンの折り返しを、ギュンドアンがダイビングヘッドで突き刺す。ゴールを決めた後でギュンドアンは、力強く拳を突き出した。

 ドルトムントはCLを含めた2連敗を脱して、勝ち点3を手にする。試合の後でクロップは「1試合勝っただけ」としながらも、「ほっとした」と言葉を漏らした。それはBVBを取り巻くほとんどの人の想いだっただろう。一方で香川には、出番は与えられなかった。

 ギュンドアンのゴールの直後、クロップはジャンプした。高く、2度。決死の覚悟で試合に臨んだ指揮官が飛んだ夜のピッチは、無数のライトに照らされて、真昼のように明るかった。

【了】

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