ゴトビ体制からのバトンタッチ
今季、清水のスタートは悪くなかった。開幕戦で7年ぶりとなる勝利を挙げ、4月にはナビスコカップを含め公式戦5連勝を記録。しかし、その4月の快進撃を最後に低迷が続いた。ナビスコカップ予選を開幕から3連勝で迎え、あと1勝すれば決勝トーナメント進出が決まる状況から3連敗。次のステージに進めなかった。
その悪い流れは、ブラジルW杯によるリーグ中断期間以降も変わらなかった。結局、第17節・柏戦でリーグ8試合ぶりの勝利のあと、アフシン・ゴトビ監督を解任。7月30日、当時ユースの監督を務めていた大榎監督に清水の命運を託すこととなった。
大榎監督にしてみれば、「いつかは清水で監督をしたいと思っていたが、『このタイミングでか……』というのが正直な気持ち」と就任会見で語ったように、いきなりチーム再建という重荷を背負うこととなった。2002年に引退し、03年から1年間清水トップチームのコーチ経験。その後、早大ア式蹴球部の監督を4年、清水ユースの監督を6年半。トップチームの監督としては初めての指揮だった。加えて、チームには善くも悪くも3年半にもわたったゴトビ前監督の色が強く残っており、新指揮官のサッカーを根付かせるには時間が足りない。「途中で監督が代わって良い結果が出たチームは少ないのではないかと思う」と不安を口にしつつ、それでも「このチームを絶対に下のカテゴリーに落としてはいけない」という使命感が彼の中にあった。
初陣は第18節・FC東京戦。0-4の大敗だった。ゴトビ監督が率いていた時と同じスタメン、同じシステムを採用していたにもかかわらず、「選手は最後まで戦ってくれた。そこに明るい光が見えた」と試合後に語るのがやっとで、内容的には多くの時間帯でボールを支配され、ほぼ何もできない試合だった。
翌節の徳島戦はメンバーを代えて勝利したものの、そこから後が続かない。第20節・仙台戦は2点をリードされ、一時追い付きながら、最後に力負け。以降の試合は毎回のように複数失点を重ね、さらに追い打ちをかけるようにCBの負傷も相次いだ。3バックに挑戦しても失点は止まらず、第26節・大宮戦までリーグ7戦勝ちなし。その間に20失点を喫し、順位も一気に17位まで滑り落ちてしまった。
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