親がなくとも
思えば、城福はいつも家を空けていた。夫がどこにいるのかわからず、「今、あなたどこなの?」と、妻が電話で聞いてきたこともあった。サラリーマン時代にも迷惑をかけていた。その頃は、仕事が忙しくて、もっと帰らなかった。
逆に、監督解任後の一年間は、家に居続けた。慣れない執筆活動と期限に追われ、部屋で唸っていることが多かった。「やっぱり、自分は芝の上で声を張り上げているのが、向いているんだろうな…」と、思った。
一日中家にいる父親に、子供たちもどこか煙たがっていた風で、現場復帰には、家族みんなが喜んでくれた。そして、再び家を空けることとなった。
「子育てをする上で、ですが…」城福は、言葉を選びながら話した。「父親が家にいる時がうまくいって、いない時に問題が多いのか? というと、そうでもないような気がします」むしろ、いた方がマイナスになる場合もある、と言うのだ。
「いなさすぎも、もちろんよくはないのでしょうが、子どもへの影響は、そういう問題じゃないだろうなと、僕は感覚的に思っています。いや、反省も含めてですよ。“生き方”であったり、何かあったときに“父親としてどうアプローチするか”。そういうことだと思うんです。『自分の背中をどう見せるか』、なのかなと」
長男は、今年晴れて社会人になった。長女は、目下、受験勉強中である。お子さんたちの未来に望むことを聞くと、「社会に貢献できる存在になって欲しい」と、シンプルに返ってきた。そして、こう続けた。「やっぱり対等に酒を飲んで話せる、そういう関係でいたいですね」
(2013年時点)
続きは『プロフットボーラーの家族の肖像』にて、お楽しみ下さい。
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