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Jリーグ 10年前

これが産みの苦しみ、今季も優勝に届かず。それでも川崎Fが攻撃サッカーを貫くべき理由

text by 青木務 photo by Getty Images

重要なのは目指すサッカーを最後まで貫くこと

 相手も川崎Fの破壊力はわかっているだけに、警戒心を強めて挑んでくる。しかし、それを打ち破るだけの力はあり、アイディアだってある。だがそれが出せない。大久保が問題点を指摘する。

「今は明らかに攻撃に移る時のスピードが遅い。そこが一番の問題。ゆっくりのテンポから、どこかでスイッチを入れるというのがない。全部ゆっくりで、中を固められたからサイド、そこから中に戻して逆サイドに行ってと。ずっと、それの繰り返し。どこかでガッと入れないと。取られてもいい。取られたらみんなで囲み込めばいいし。それがすごく足りない。だから今はいい時に比べてチャンスが少ない」

 勝利を欲するがゆえにボールを大事にし過ぎているのかもしれない。また、ボールを保持し続けられるからこそ、より確実なパスコースを見出そうとしているとも考えられる。

 優勝を狙うあまり慎重になってしまった、という見方もできる。しかし、川崎Fの真骨頂は相手の急所を容赦なく突く攻撃であり、それを続けることで勝利を手にしてきた。

 勝利のためには割り切ってボールを捨てることも必要だ。しかし、風間監督にも選手たちにもそういう考えはないだろう。自分たちがボールを握っていれば絶対に勝てる。それは決して傲慢ではなく、自信があるからだ。そして、それを裏付けるだけのパフォーマンスも見せることができる。

 大事な試合を取りこぼすのは、本当の意味での勝者にまだなっていないからだ。

 ジュニーニョ、チョン・テセらを擁してリーグ2位になったこともある。ヤマザキナビスコカップで準優勝したこともある。しかし、優勝した経験はまだない。

 川崎に必要なのは、頂点に立つという揺らぐことのない成功体験だ。今は産みの苦しみを味わっている段階で、優勝するための道筋は去年より今年、今年より来年というように着実に明確になっているはずだ。

 しかし、今ここで自分たちのプレーを貫けないようでは、歓喜の瞬間はいつまで経っても訪れない。

 J1も残り3試合となった。川崎フロンターレには勝利はもちろん、目指すサッカーを前面に押し出すことが求められる。

【了】

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