選手たちの心を開いた特有のパーソナリティ
第一線時代、『炎のストライカー』としてゴールを量産した中山氏。そのサービス精神旺盛な姿勢と達者な話術は当時から健在であり、授賞式やテレビ番組ではいつも“ネタ”を用意して視聴者を笑わせていた。サッカー界きってのムードメイカーであった。
そんな中山氏がこの日見せたインタビューは、きわめて誠実なものであった。おそらく、インタビューした選手たちはいずれも顔なじみなのだろう。しかし、冒頭で必ず「お疲れ様でした」と挨拶をし、インタビューする選手の両目をしっかりと見つめながら、ジェスチャーを交えつつ質問を投げかける。
中山氏のそういった姿勢に、選手たちの表情は常に朗らかだった。もちろん、6-0という結果がそうさせた部分はある。しかし、その質問の言葉には力が込められており、選手たちに「答えなければいけない」と感じさせる何かがあったはずだ。
乾貴士は爆笑し、あの本田圭佑にいたっては見たこともないほど穏やかな顔を見せた。本田相手に「あえて」という言葉を意図的に使ったあたりにも、中山氏の余裕とユーモアを感じる。
中山氏はこの日、特別な質問をしたわけではない。それは質問内容を文字起こしすれば分かる。
しかし、真面目でありつつも時折「中山らしさ」を交えたその世界観は中山氏特有のものであり、そういった中山氏のパーソナリティが選手たちの心を開かせていた印象がある。
選手自身も中山氏をリスペクトする気持ちがあるのだろう。選手が返答する様子を見ていて、目には見えぬ忠誠心を感じずにはいられなかった。
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