「決して(ユナイテッド株を)買ってはいけない」
ユナイテッドは、かつてプレミアリーグが創設される前年の1991年6月にロンドン証券取引所(LSE)に上場したが、株式公開は一般的には嬉しいことばかりではない。
投資家からの厳しい質問が繰り返されることに加え、高株価対策を含めた各種施策をはじめ、IR(投資家向け広報活動)を積極的に進めていかなければならず、しかも投機筋からは、買い占めされる危険性さえある。
そんななか、米NFLタンパベイ・ブッカニアーズのオーナーだった故マルコム・グレイザーは、03年から粛々とユナイテッド株を買い始め、05年にまんまとユナイテッドの買収を成功させ、その直後、今度は、自らが上場廃止を決めた。
ところが、その買収劇は、グレイザーが抱えていた巨額の債務処理を図るためのLBOだったため、ユナイテッドは、それまでの無借金経営から一転、巨額の赤字企業に転落。以来、赤字経営がずっと続いている。
そこでグレイザーは、4億2300万ポンド(約728億円)の借金を一気に減らす目的で、最終的にはNYSE(ニューヨーク証券取引所)に12年8月10日に上場させた。
しかし、ユナイテッドの株式は、ロンドン証券取引所に上場した当時でさえ、8.33ポンドの初値を付けたあとは下落を続け、その後しばらくは、2ポンドを下回る状態がずっと続いていた。
だからこそ、NYSEへの上場当日に、『フォーブス』には、こんな見出しが踊った。
『History Says Don’t Buy(歴史は語る。決して(ユナイテッド株を)買ってはいけない)』
ユナイテッドをはじめとするクラブの収益については、デロイト監査法人の『フットボール・マネー・リーグ』で概略はつかめる。
それを見る限りでは、増収ばかりが目に映るが、それもそのはず。移籍金の動向や税金などは一切含まれず、『highest earning club(もっとも稼いでいるクラブ)』についてのみのレポートだからだ。
その一方、冷徹とも言うべきクールさで、クラブ経営を分析している企業がある。