チャンスを作る能力。プレッシャーを吸収できる安定性
さらに内田が優れているのは、そこから前に出て行くか、そのままステイするかの状況判断で、長友ほど頻繁に攻め上がるわけではないが、内田が右サイドをするすると上がると、高い確率でチャンスにつながるということだ。
確かに爆発的なオーバーラップや仕掛けは攻撃に迫力をもたらすが、現代のサイドバックは中央から来たボールを失うことなく捌き、パスの受け手がスムーズに次の行動に移れる状況を作ること、そして攻守のバランス感覚も求められる。
そこに機を見た攻め上がりがプラスアルファされれば申し分ないが、少なくとも左右のどちらかは中盤の選手に勝るとも劣らないビルドアップのスキルと判断力、そしてバランス感覚を持っている必要がある。しかも相手が強くなるほど、その重要性が顕著になってくる。
3日目の練習で、縦40メートルほどのコンパクトフィールドで4バックに3ハーフ(MFの)あるいは3トップを加えた7人にGKを付けた、8対8のミニゲームがあった。内田のボール捌きを観察していると、プレッシャーが厳しい中でも、来たボールを味方に預けるのではなく、受け手の良い状態を作って渡していた。
ワンタッチでも、ボールキープでも、自分がプレッシャーを吸収することで、中央の選手が無理なくボールを持てるようにすること。言ってしまえば基本的だが、実際にライン際で安定的にこなせる選手はなかなか見当たらない。
ボールタッチが正確であり、必要に応じて左右を使い分けられることがベースにあるが、何より流れの中で周りを見渡し、的確な判断ができているということだ。
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