明らかに大きすぎる箱、命名権ビジネスも確立されず
そうやって建てたはいいが、その後、資金を回収できる保証はどこにもない。ニースの新スタジアムは3万5000のキャパシティを誇るが、南仏のリゾート地である彼らの年間平均観客動員数は約1万5000人。あきらかに箱が大きすぎだ。
ドイツでは、2006年のW杯以降、スタジアムへ足を運ぶ人の数、とりわけ、高額なVIPパッケージを利用する人たちが2倍に増えたとのことで、リヨンのオラス会長なども大いにその効果を期待しているようだが、果たしてサッカー熱がそれほど高くないフランスで同じことが見込めるかどうか。
また、他国では、アリアンツアリーナ、エミレーツスタジアム、といったネーミングライツで多額の資金を得るところもあるが、フランスではまだその習慣は浅く、スポンサーからの申し出を拒絶するオーナーも多いという。
リールもそのひとつで、市が向こう30年かけて建設会社に返済する建設費用を捻出すべく、サッカー以外のイベント招致に躍起で、去年は人気シンガー、リアナのコンサートが行なわれていた。
そんな、「スタジアムの建設にこんな大金を投じている場合か!」という声が挙がっているところへ、つい先日、またも爆弾記事が投下された。
経済紙レゼコーが、11月3日付けの紙面で、ユーロ2016の主催者(つまりはUEFA)が、消費税以外、一切の課税を免除されることになっていることをスッパ抜いたのだ。
『またもサッカーを贔屓?』(“また”というのは、高額所得者への75%の課税措置が緩和された前例があったため)という見出しのその記事には、2010年に開催地候補に立候補したときから、フランス政府がそのことを確約していたと記されている。
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