スタジアム建設費以外にインフラ整備費も付随
フランスは、ほんの16年前の1998年にW杯を開催しているから、すでにある程度のインフラは整っているのでは、と思いきや、国内にあるスタジアムの平均寿命はなんと66才! という長老ぞろいで、戦後の1945年以降、今回のユーロに向けてのテコ入れ以前に新設されたスタジアムは、パルク・デ・プランス、ナントの本拠地ボージョワ、そしてW杯のために建設されたスタッド・ド・フランスの3つしかないというのだから驚きだ。
プロリーグ協会会長のティリエス氏は、ドイツやイングランドなど隣国リーグを例に挙げて「ビッグクラブには、それ相応のスタジアムが必要」と、華麗なスタジアムを所有することがリーグの格を上げることにもつながると力説している。
確かに、『夢の舞台』なるスローガンが掲げられたマンチェスター・ユナイテッドの本拠地、オールドトラッフォードなどは、スタジアム周辺にいるだけで、なんともいえない、イベント感、高揚感が沸き上がってくる。
しかし、夢の舞台を用意するにはそれなりの資金が必要なわけで、たとえばリヨンのルミエール・スタジアム建設には4億ユーロ(576億8600万円)、リールのグランド・スタッドには3億2000万ユーロ(461億4900万円)もの大金を擁した。
ルミエールは、フランスで唯一、完全にクラブ所有のプライベート・スタジアムだが、他はすべて所有権が自治体にあり、したがって公共の財源から資金を捻出することになる。しかも、スタジアムの建設費だけに留まらない。
新たな交通ルートを確保するために、トラムを敷いたり、バス停を新設したりと、周辺のインフラ工事もセットでついてくるわけだから、サッカーにまるで関心のない人などは、「なぜそのためにいろいろなものが値上がりするんだ?」と文句も言いたくなるわけである。
実際、スタッド・ド・フランス建設の際には、生まれたての赤ん坊を含めた、フランス国民全員がおよそ1000円を支払ったのと同等の公的資金が使われ、そのことをいまだにボヤく人もいる。