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フットボールマネーを追え!【11】選手補強にも影響を及ぼす「所得税」。銀河系軍団推進の一助となった“ベッカム法”

シリーズ:フットボールマネーを追え! text by 小松孝 photo by Getty Images

“税金天国”のスイス。各国で異なる事情

 そのため、モナコは、欧州5大リーグの他の97チームと比べても、選手やコーチングスタッフへの人件費は、大雑把に言えば約半分で済んだ。あるいは同条件、同一予算であれば、他チームの倍近い金額まで給与水準を引き上げることも可能だったのである。

 ロシアの富豪ディミトリー・リヴォロフレフが2011年12月にモナコの経営権を握り、迎えた12/13シーズンには、早くもリーグドゥ(2部)で優勝。リーグアンへの昇格を果たすと、敏腕代理人ジョルジュ・メンデスとの二人三脚により大型補強を敢行できたのも、そのためだとも言えよう。

 だが、こうした不公平さに不快感を表したLFPは、モナコに対しフランス国内への納税を強く求めていた。しかしモナコ側でも当初、『訴訟も辞さない』構えを見せ、議論は平行線をたどっていた。

 ところが2014年1月、モナコがLFPの要求を受け入れることに合意。5000万ユーロ(約68億5000万円)を支払うことで終止符が打たれた。これにより、モナコは今後、今までのようには地の利が行かせなくなった。

 これにより、モナコの補強が今後どうなっていくのか、推移を見守りたい。

 また、事実上のタックス・ヘイブンとも言われているのがスイスである。スイスには、26のカントン(州)があり、所得税は連邦税として一律11.5%と決められているが、それに加えて州が独自に決められる税率がある。

 柿谷曜一郎が所属するFCバーゼルがあるのはバーゼル=シュタット準州で、そのバーゼル=シュタット準州を下から支えるように隣接しているのがバーゼル=ラント準州であり、その州の最高税率はスイス国内でもっとも高く、すべて足して約25%。だが、それでも約25%である。しかも、州税については、どの州でも交渉次第で決まるという。

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