“システムに勝る個人”。怪物を並べただけのバルセロナ
しばらく退屈な時間が続いたが、71分、メッシのドルブルを止めようとしたフェルトマンが2枚目のイエローで退場する。75分、右サイドから中央へのドリブルから左のペドロとのワンツーで、2点目。メッシの2ゴールで、バルセロナのグループリーグ突破、アヤックスの敗退が決定した。
そして怪物はアヤックスだけでなく、バルセロナをも飲み込んでしまったようである。もはや、完全に。
アヤックスと戦ったバルセロナに、かつてペップ・グアルディオラ指揮下の10-11シーズンに3冠を獲得した頃のような輝きはかけらも無かった。
チーム全体が激しく連動したプレスも、相手に苛立を与える華麗なパスワークも、見る影は無い。チャビは栄光の片鱗を見せたが、そのプレーはただ歳の重ねに抗うかのようだった。
クライフの系譜で辿れば兄であるアヤックスの弟にあたるバルセロナも、同じ4-3-3でゲームに臨んだ。敗れはしたものの、兄のそれが依然として実用性と機能美を示したのに対して、弟はどこかフットボールとしてのチーム性を放棄してしまったようだ。リオネル・メッシを中心に据え続けているが故に。
4-3-3の3トップにネイマール、スアレス、そしてメッシを並べる。メッシを初めとする3人の怪物を並べただけ、とも言ってしまえるし、最終的には造られたシステムよりも人間の創造性が勝る、とも言える。事実、この日アヤックスはメッシに屈した。
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