豊田がもたらす戦術の幅
ジャマイカ戦では岡崎が相手DFと競った後、2列目がイーブンに近い状態でセカンドを奪いにいく場面が目立ったが、そこで豊田がマークを背負って手前に落とす、あるいは優位な状態で競る形にできれば、2列目の選手がボールを持って前を向きやすくなる。
ポゼッションに依存しないスタイルでは、そうしたターゲットマンの働きがより重要になる。相手が引いて守る場合はなおさらだ。精力的なチェイシングも全員守備を掲げるアギーレ監督が頼りにする部分で、相手のビルドアップを限定する助けになる。
加えて面白いのは2トップの形で、途中で4-4-2に変更した時、岡崎や小林悠とコンビを組み、近い距離でフィニッシュを引き出す形は膠着状態を打開するオプションになる。豊田はマークを背負う役割を意識しながら、機を見て裏を狙うなど器用さもあるため、崩しのバリエーションも出せるだろう。
そうした戦術的な効果が期待できる一方で、やはりカギを握るのは得点力だ。Jリーグでは安定して高い得点力を誇るが、ザッケローニ時代は東アジアカップも含め、4試合の出場で1得点もできず、決定的なシュートを打つ場面も少なかった。豊田自身もその部分を強く意識していた。
今季のJ1では第31節まで全ての試合に先発し、途中交替は2試合しかないなど、29歳だが体力的にも充実している。3月のニュージーランド戦に向けた合宿で「代表のために死ぬじゃないですけど、そのぐらいの意識で臨みたい」と語っていた男が、再度のチャンスで真価を発揮できるのか。
「彼は誇りを持って正直にプレーする」とアギーレ監督が語る豊田が日本代表に定着できれば、戦術的な効果や得点力はもちろん、アジア制覇に向けて戦うスピリットをチームに注入することができるはずだ。
【了】
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