致命的なミスも、精度の高いパスで得点の起点に
不用意なミスではあった。だが、あのような局面でも相手を剥がそうとするのは、川崎の選手にとっては普通のことだろう。
そして、司令塔としての責任感もあった。65分に中村が足を痛めてベンチに下がった。ボランチの位置でチームを動かしてきた大島に求められる役割が増えた。
「常にモチベーションは変わらない」と前置きしながらも、こう続けている。
「(憲剛さんが)いなくなるのは痛いですけど、その中でチームが勝てれば今後に生きてくると思っていた。やってやろうという気持ちはありました」
この日も大島は攻撃の起点となり、味方とのコンビネーションで中盤を崩していった。
44分に生まれたチーム2点目も、大島の精度の高いパスがきっかけだった。右サイドのスペースに強く正確なパスを送ると、オーバーラップした小宮山尊信が中へ折り返し、小林がネットを揺らした。
「コミさんが上がっているのが見えましたし、ああいうのをどんどん増やしていきたい」と話す一方で、本来の狙いは別のところにあったことも明かしている。
「本当は悠さんが最初にランニングをかけた時に出したかったんですけど、自分のタイミングで逃してしまった。できれば直接、悠さんに出すというのも必要だった」
得点に結びついただけでは満足せず、高い理想を持ってプレーしていることがわかる。
それでも、この日の敗戦の一端は大島にある。
「まずは自分自身が技術や判断を見つめ直して、ああいうミスをなくさないといけない」
ブレない信念の下、川崎は自らの特徴を極めようとしている。大島もチームになくてはならない存在だ。だからこそ、今回のミスを糧とし、前を向かなければならない。
川崎が本当の意味で強者となり、Jリーグを制覇するには、大島の更なる成長が欠かせないのだから。
【了】