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Jリーグ 10年前

“雑草軍団”松本山雅、初のJ1へ。緻密な指揮官・反町康治、サッカー不毛の地で埋もれた才能を再生

反町康治監督の下、クラブ初のJ1昇格を果たした松本山雅。就任当初、選手・施設の質ともにトップレベルとは程遠い状態だったものの、地道な努力の結果、就任3年目で大きく改善。最高の成果を手にした。

text by 元川悦子 photo by Getty Images

「アカデミー賞の挨拶みたいになってしまいましたね…」

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2012年からチームを率いてきた反町康治監督【写真:Getty Images】

「ソリさんの下でやってきて走力や守備力、攻撃に出ていく力がすごく変化したかな。とにかく練習がJリーグ全チームの中で一番きついんで。

 自分自身も『もう次はない』という危機感を持ってやりました」と語気を強めたエースナンバー10・船山貴之が先制点を奪い、「シーズン途中に移籍してきて、監督と週1回やる特別練習がとにかくきつかった」と苦しかった半年間を振り返った山本大貴が追加点を挙げ、アビスパ福岡を撃破した松本山雅。

 サッカー不毛の地と言われた長野県についに初のJ1クラブが誕生した。

 2012年からチームを率いてきた反町康治監督は「天国にいる松田(直樹)と、残念ながら先日の御嶽山の事故で亡くなられた野口さんが抱き合っていると思うと、嬉しくて仕方がありません。

 届かぬ夢というところからスタートして、1日も休むことなく努力してきた結果。我々スタッフも本当に努力しましたけど、いろんな人の力が結集して、こうした好結果を残すことができた。

 アウェーにも関わらず1000人以上の方が遠い松本からお金と労力をかけてここまで来て声援を送ってくれましたし、来られなかったサポーターにも感謝してもしきれない。

 街中でもポスターを貼ってくれたり、のぼりを掲げてくれた1人1人の力があってこそだと思っています。何かアカデミー賞の挨拶みたいになってしまいましたね…」と冗談交じりに笑いながら、チームに尽力してくれた人々に心からの感謝を口にした。

 普段の指揮官は「山雅はプロクラブとしてなってないところが多い」「環境が整っていない部分が多すぎる」などと苦言を呈することが多いのだが、それもあまのじゃくな性格ゆえだろう。この日は就任後、初めて公の場で素直な気持ちを吐露したと言ってもいいかもしれない。

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