スペインの“良い選手”とはサッカーを「知っている」選手
U-19アジア選手権の準々決勝でU-19 日本代表は北朝鮮代表にPK戦で敗れ、日本はU-20W杯の出場権を4大会連続で逃してしまった。育成年代から体系的に戦術指導を行うことが求められる【写真:Getty Images】
「日本にはボール扱いの巧い選手はいるが、サッカーを知っている選手は少ない」
「日本では巧い選手がプロになるが、スペインではサッカーを知っている選手であれば巧くなくともプロになる」
日本とスペイン、両国のサッカーを知っているサッカー関係者からよく耳にする言葉であり、現場指導も含めてスペインサッカーを実体験した私自身が痛感する現実だ。例えば、スペインにおいて「Buen jugador(いい選手)」という褒め言葉には必ず「サッカーを知っている」という戦術理解力の高さが含まれており、選手の評価としては技術以上に戦術理解力の有無が重視される。
なぜなら、スペインにおいては明確に「戦術とは問題を解決する行為である」という定義があり、選手のプレープロセスも「(1)認識→(2)分析→(3)決断→(4)実行」と整理されているからだ。日本において評価や指導の対象となるのは目に見える「(4)実行」の部分であり、育成年代においては未だに低学年からボール扱いや1対1に特化した指導が多い。
しかし、スペインにおいて「テクニックのある選手」とは、上記4つのプロセスを完遂できる選手であり、目に見えない(=頭の中の)最初の3つのプロセスについてもしっかりとトレーニングされている選手である。戦術理解力とは育成年代からのトレーニングと実戦(試合)経験の積み重ねであり、選手が先天的に持っている能力でも、自然と身につくものでもないのだ。
サッカーが戦術的、戦略的なチームスポーツである以上、低年齢からの戦術指導は選手育成において外せない要素となるが、残念ながら日本では「小学生に戦術指導など早い」という意見が多く、総体的に戦術指導が放置されている。
そうした育成環境で育った日本人選手が戦術理解力不足に陥るのは当然の帰結であり、最終的にそのツケはプロの世界、国際大会で払うことになる。ブラジルW杯での敗因は「自分たちのサッカー」云々の話ではなく、単純に問題を解決する行為である戦術が日本に欠如していたことであった。
また、アギーレ監督の初陣となったウルグアイ戦は実質3日間の練習のみでの実戦で、当然ながらチームとして戦術を統一・浸透させる時間はなかった。ある意味で、選手の戦術理解力を問うには最良の試合であったのだが、ちぐはぐな内容と0-2での敗戦という結果からもわかる通り、本田、岡崎のように欧州トップレベルで複数年揉まれて戦術レベルを上げている選手を除けば日本代表に選ばれる選手であっても「頭のいい」、「サッカーを知っている」と形容できる選手がほとんどいないことを露呈した。
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