徹底された“本田封じ”。「戦術的な試合」で沈黙
「戦術的な試合となってしまった」。26日のミランvsフィオレンティーナ戦後、インザーギ、モンテッラの両監督の口からは、ともにそんな言葉が口をついて出た。
同世代の元名ストライカーが、監督として腕を競い合う。しかしそんな一戦は双方ともに互いをリスペクトするあまり、オープンに攻めるよりも警戒の強さが表に出た。
互いの手の内を読みつつ、プレスやカバーリングを駆使してストロングポイントを食い止め合う。端的に言えば、“戦術的な試合”とはそういうことだ。
7試合6ゴールとゴールラッシュを続けていた本田が小休止したのも、戦術上の対策をしっかり練られたからだ。「インザーギの発想のおかげで本田は少し厄介な存在になってきた」と語ったモンテッラは、7試合で6ゴールを挙げた彼を十分に警戒してきたのだ。
試合中は、主に左SBのマルコス・アロンソが本田を見た。フィオレンティーナで2年目を迎えたレアル・マドリーのカンテラーノは戦術理解力を高め、主将のパスクアルから定位置を奪い先発する試合も多くなっている。そしてこの試合では、恵まれたフィジカルを本田にぶつかり、スペースを消しにかかった。
ただそれだけなら、中にポジションを絞る本田に釣り出されてサイドのスペースを空け、マークの受け渡しにも混乱をきたす要因にもなるのが関の山だ。しかしモンテッラは、その部分にも研究を図っていた。
DFラインの前にはゾーンをきちんと敷いて、アバーテとの連係をボルハ・バレーロのプレスで切る。本田が縦のスペースへ入り込み、左からのアーリークロスを呼び込んだ時にはCBのサビッチがすかさず着く。
そして本田が左足でボールを持ち、右サイドからゴール方向を伺った時には複数の選手でスペースを消す。ユベントスを別にすれば、これまでの相手の中では一番本田封じを徹底していた印象だった。
その結果本田にはシュートチャンスが訪れず、クロスも通せなかった。特に後半、左足でのコースが切られてバックパスを選択したシーンが頻発したのは残念だった。
輝かしい活躍を残せば、それだけ相手の対策も周到になる。こういうものを振りほどき、チャンスを作れる技術と力量が今後は問われることになる。