実はプラスだったユナイテッドの収支バランス
また、移籍金を受け取るクラブは会計処理上、一般的にはその金額を『一括』計上できる。
つまり再度、スアレスに話を戻すと、リバプールは、スアレス放出によって現場からは「望まない補強」と嘆き節が囁かれたなかで、クラブの懐勘定としては、8125万ユーロ(約111億円)という巨額の『売上』を損益計算書に計上できたというわけだ。
うがった見方をすれば、リバプールのフロントは、そのことを皮算用したうえで2013年12月に契約延長をスアレスにもちかけたのであれば、『ずる』が付いてもおかしくないほど賢い取引だったとも言えよう。
このような獲得と放出で生じるクラブの算盤勘定について、ユナイテッドを例に挙げて簡単に計算すると、表のようになる。
このように、ユナイテッドが断行した補強額は、ざっと1億8595万ユーロ(約255億円)という巨額に達し、その額の大きさだけが何かと取り沙汰されることが多いが、ユナイテッドの会計上、実際の年間経費は、4175万ユーロ(約57億円)となる。
これに対して、一括で売上計上できる金額は、表の通りである。
エルナンデスについては現在、放出先のレアルと交渉中だとされているが、めでたく交渉が成立した場合を想定し、移籍金については、分かりやすくするため、その間を取ってざっくり25億円と仮定し、それにウェルベックや香川らの移籍金を足すと、それだけで約68億円に及ぶ。
つまり、この金額だけを見ると、収支バランスは、今のところプラス(黒字)という結果が導かれたのである。
ユナイテッドの場合には、マッチデー収入や放映権収入、コマーシャル収入が潤沢にあることに加え、選手の移籍だけを取り出しても、収支バランスに優れた経営であることが、この試算からもうかがえる。
また、クラブ側が選手との契約を長期にしたがるのは、将来価値(得られる移籍金)の機会をできるだけ作っておきたいという理由からだけではなく、表からも分かるように、長期にすればするほど毎年かかる減価償却費を抑えられるからだとも考えられる。