若手の見本としても成果。守備陣に安定感をもたらす
今年1月にBEC移籍が正式決定し、2月下旬の開幕まで準備期間があったが、まずは自分の実力を示すことが肝要だった。
「自分が大したことないプレーをしていたら『元日本代表はあんなもんか』と言われる。常にハードルが上がった状態でプレーしなければならなかった」と本人も言う。
タイ人や他の外国人選手たちは日々の練習から全力を尽くすという意識がやや低く、ちょっとしたところで手を抜いたり集中力を欠いたりする。試合になれば時間稼ぎのために倒れる選手が続出する。
そういうルーズさにやはり戸惑いも覚えたという。が、1年早くBECに加入していたMF下地奨(元サガン鳥栖)の存在がプラスに働いた。
今季15得点を挙げ、来季は高額年俸でポリス・ユナイテッドに引き抜かれることになった下地は「大樹さんが自分のいい部分を引き出してくれた」と心から感謝していたが、岩政も「サッカーに対する姿勢やプレーの緻密さという部分で同じ価値観やスタンダードを持つ選手がいて本当に助かった」としみじみ語っていた。
とはいえ、TPLは全く初めてのリーグ。シーズン前半はGKやDF陣との連携面で難しさを感じることが多かった。そこで岩政は自分自身でできる限り多くの仕事をしようと割り切った。
1対1で激しくボールを奪いに行くのはもちろんのこと、鹿島時代なら仲間に処理を任せたボールでも自らクリアするなど、とにかく多彩な役割を担った。
「タイの選手たちは戦術理解という意味ではまだ乏しい部分があるし、相手を分析した上で対策を考えることが非常に少ない。そこで僕は個人的に相手をスカウティングして、ピッチ上で守備陣に伝えるようなアプローチは試みました。
若い選手たちが僕の言うことを吸収しようという意欲を示してくれたのはすごく大きかった。昨季のBECテロに比べると、現段階までの総失点が20点くらいは減っている。自分のやってきた成果が少しは出たのかなと思いますね」と岩政は自分なりに考え渡来したことによって、自分自身の幅が広がったと実感しているようだ。