得意な形から約4ヶ月ぶりのゴール
ミックスゾーンに姿を現した鹿島アントラーズのFW赤﨑秀平に表情はなかった。ガンバ大阪との上位対決を逆転負けという形で落としており、赤﨑だけでなく鹿島アントラーズの全員が感情を押し殺していた。
だが、赤﨑自身にとっては今後の糧となる試合だった。
この日、大卒ルーキーは先制ゴールを奪っている。前半5分、MF土居聖真がドリブルで持ち込み、右サイドのMF遠藤康に展開。中に入りながら左足でスルーパスを送ると、そこに赤﨑が走り込む。相手選手が手を上げてオフサイドをアピールするも笛はならない。完璧なタイミングでの抜け出しだった。
右足アウトサイドでボールをコントロールし、流麗なターンでシュートモーションに入る。対応が遅れたDFをよそに赤﨑は左足に力を込めると、強烈なシュートがネットに突き刺さった。
そして素早く振り返り、ベンチへと走る。チームメイトからの手荒い祝福を笑顔で受けた。歓喜の輪が解けると今度は鹿島サポーターが陣取るゴール裏へ向けて、左胸のエンブレムに手をあて、2度、3度叩く。試合前から盛んに自分の名前をコールしてくれた“12番目の選手たち”に感謝を示しているようだった。
「前の試合で結果を出せずに悔しい思いをしたので、思い切りやろうというつもりで試合に入りました。自分が勝たせるつもりで試合の頭からシュートを打っていこうと思っていた。あれは自分の得意なもらい方でもありましたし、遠藤選手がしっかり見ていてくれたので、決められたのは良かったと思います」
5月の徳島ヴォルティス戦でプロ初ゴールを決めたが、その後は無得点。FWダヴィとのワントップ争いで優位に立てず、出場時間も限られた。
出場すればチャンスは作ってきた。相手DFとの駆け引きから一瞬のスピードで裏へ抜け出す一連の流れは、赤﨑の真骨頂である。パスを送る味方との呼吸も合っている。得点だけが欠けていた。だからこそ、約4ヶ月ぶりとなる今季2点目は自らの存在価値を証明する一発になった。