クロースのゴールで先制もアディショナルタイムに同点
3日前にワルシャワでポーランド代表に史上初の敗北を喫してなお、場内のドイツ人には余裕があった。2014年10月14日欧州選手権予選グループD第3戦、ドイツ代表はシャルケの本拠地であるヴェルティンス・アレーナに、アイルランド代表を迎え撃つ。
まだ余裕はある。それでいて、一抹の不安を拭えない。試合の前にさりげなくビールをあおるドイツ人の中で、アイルランド人は意気揚々としていた。ポーランドがあれだけやれたのなら、オレたちにもチャンスはある。
緑のアウェイ席は、攻め入る世界王者を相手に耐え、わずかなチャンスを掴もうとするチームを歌と声で鼓舞し続けた。前半を無失点で切り抜け、後半に入っても、歌は止まない。
しかし71分、クロースの一撃がアイリッシュの希望を吹き飛ばした。ミドルレンジから放たれたシュートは、左のゴールポストに当たって、ゴールの中にねじ込まれた。当然のことのように、ドイツ人は沸いた。アイルランド人は沈んだ。
そのまま試合が終わると誰もが思っていた。アディショナルタイムも過ぎ去ろうとしていた。一瞬の出来事だった。ゴール前の混戦から、オシェアが突き刺す。
ドイツ人は沈み、アイルランド人は再び希望に沸いた。1人の女性は感極まって、涙で目を溢れさせようとしている。そのまま試合は1-1で終わった。ドイツ代表は掴みかけた勝利をすんでのところで逃した。
ドイツ代表は今、栄光の後の苦悩の中にある。2014年10月16日付のキッカー紙は「ぐらつく世界王者」、「レーブのイレブンは最後にコントロールを失う」という見出しでアイルランド戦を報じた。16日付の大衆紙ビルトは、「ボアテングは話し合いを要求する」という大きな見出しで報じている。