エースと呼ばれたことがないストライカー
川崎フロンターレの小林悠が日本代表に初選出された。
現在リーグ戦10得点。サイドの駆け引きからゴール前へと侵入して点を取る技術に長けており、中でも裏のスペースへの鋭い動き出しに特徴があるストライカーだ。
空中戦に強いのも武器で、アギーレ監督が視察に訪れた第24節徳島ヴォルティス戦では、左サイドを突破したレナトのクロスに、逆サイドから中央に飛び込む豪快なヘディングゴールを決めてみせた。ストライカーとしての能力は疑いないだろう。[4-3-3]システムを公言する指揮官のスタイルにどう合致するか、楽しみである。
実は小林はこれまで“エース”ストライカーと呼ばれたことがない。なぜか。彼が成長を遂げているとき、その側にはいつも偉大なストライカーがいるからである。
例えば現在のチームメートである大久保嘉人。
昨年のJ1得点王であり、今年6月に開催されたブラジルW杯の代表メンバーにサプライズ選出されて、一躍時の人にもなったストライカーである。今季は小林も好調を維持しているが、得点ランキングのトップを走り続けているのは大久保のほうだ。「嘉人さんは本当に凄い」と口にしているように、日本代表に選出されてもなお、小林はこの偉大なエースストライカーの背中を追いかけ続けている。
最近、小林が大久保の偉大さをあらためて目の当たりにする瞬間があった。第25節の大宮アルディージャ戦である。9月23日は小林自身の誕生日ということで、本人も気合いが入っていた。しかし前半途中に足を負傷。無念の交代を余儀なくされている。
ベンチに下がった、その直後のことだ。