現在イングランドメディアで盛んに取り上げられている話題の一つに、「ルーニー・ルールを採用すべきか」というものがある。
以前から導入の是非について議論されていたが、事の発端は、プロサッカー選手協会(PFA)会長ゴードン・テイラーが発した「フットボールの世界には隠れた差別が存在する」という発言。先月23日にイギリス国営放送『BBC』が報じたものだ。
彼が言及したのは、イングランド・フットボール界のコーチングスタッフに黒人や少数派民族の人間が少ないという点。実際にプレミアリーグ(1部リーグ)とフットボール・リーグ(2部?4部リーグ)を率いる全92人の監督のうち、当てはまるのは現在2人しかいない。
チャンピオンシップ(2部相当)所属ハダースフィールド・タウンFCのクリス・パウエルとリーグ2(4部相当)所属カーライル・ユナイテッドのキース・カールだ。
ここ数日、『BBC』を始めとした英国複数メディアで「ルーニー・ルール」に関する報道がよく見られるようになった。
ルーニー・ルール(Rooney Rule)というのはアメリカ・NFLのピッツバーグ・スティーラーズの会長ダン・ルーニー氏が考案したもの。
このルールでは、NFLではチームのヘッドコーチを決める面接の際に、必ず黒人もしくは少数派民族のコーチを候補に含めなければならないとしている。2003年にこのルールが採用される以前は、およそ80年間で7人だったアフリカ系アメリカ人の監督は、2003年の導入以降11年間で11人とその割合は増えている。
テイラー会長が提唱するようにイングランドにはこうした少数民族が監督となる例は少ない。それはイングランドではプレーする約30%が黒人または少数民族の選手ということを考えるとなおさら奇妙に感じられる。
3日、イギリス『テレグラフ』の記者ヘンリー・ウィンターは同紙の中で「ルーニー・ルールによって彼ら(少数民族)にチャンスが与えられる」とフットボールの世界でも導入すべきとの意見を述べている。
さらに現役の選手や監督にまで波及している。元イングランド代表のリオ・ファーディナンドもルール採用に賛成している一人だ。
「いままさに変化の時だと思う。イングランドには2人しか黒人監督はいない。ピッチ上とは全く別の光景だ」というファーディナンドの発言は『ESPN』に掲載された。
一方、チェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督は『BBC』でこうした論争について「フットボールの世界に差別は存在しない」と冷ややかなコメントを残している。
近年は選手に対する差別的なチャントや横断幕が頻繁に取り上げられているが、こうした問題は決してピッチ上だけではなくロッカールームまで及んでいる。
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