常に2手3手先にどんな変化が起こるのかを意識させる
ゲームメーカーとしての才能を開花させるための猶本選手と河島代表の二人三脚の挑戦がスタートしました。中盤の舵取り役としてブレない目標を掲げたのが“2手3手先にどんな変化が起こるのか”を考えることです。これは頭脳明晰だった彼女のストロングポイントをより伸ばすことでした。
「もともと私も現役時代はボランチでした。猶本と同じように高さも速さも強さもない選手でしたので頭を使うことにはこだわっていました。だから、身体能力で取り柄のない彼女の悩みは理解できる部分もありました。
そこで、2手3手先を読むだけでなく、そこで起こる変化を考えるように伝えました。そのイメージを持つことができれば、状況ごとに判断して下したプレーが結果的に何につながったかまで意識して観察しますから。自分のパスがその後にこうつながったという表面的な結果だけでは終わらせたくありませんでした。
ただ高校1年生の時は、次が見えていてもパスを通すことができなかった。理由は一つ、キック力がなかったのです。でも、単純にキックの練習をさせても本当の技術にはつながりません。
猶本には『パスの距離が5m伸びたら視野もそれだけ伸びるよ。あなたの考える展開も広がるけど、どうする?』と自主性を促し、負けん気の強さをいい意味で利用しました。当然、彼女は5m伸ばすと答えますから、次はキックの原理を伝えます。
体全体の力の流れ、蹴る瞬間のボールに対する足の角度の入れ方などを教えたのです。彼女はすぐに理解しました。あとは反復練習をするだけ。中盤の選手にはミドルシュートも必要だし、そこで敵に脅威を与えられない選手は価値がないですからね」
【次ページ】教科書には載っていないサッカーのスキルを教える