レベルに適したサッカー環境を周囲が作ってくれた
猶本光選手の出身は福岡です。兄の影響でサッカーをはじめ、ぐんぐんと実力を伸ばしたようです。今でも女子サッカーが抱える問題ですが、中学年代の女子サッカー部、もしくはクラブが少ない現状です。彼女もその壁にぶつかります。そんななか、学校のサッカー部とクラブの下部組織という2つの機能を持っていた珍しい中学への進学を選択します。
中高一貫教育の福岡女学院サッカー部は当時、福岡J・アンクラス(以下、アンクラス)の下部組織としても機能しており、トップチームまで目指すことができる全国でも稀なチーム体系を備えていました。同校サッカー部の鶴原一徳監督はこう語っています。
「猶本は入部してきた時から足元の技術がしっかりしていました。トラップとボールコントロールはピカイチでしたよ。もともとアンクラスはうちの卒業生が社会人になってもサッカーが続けられるようにと、私たちが作ったチームです。今も理事を務めていますから、うまい選手がいれば連携を図ってアンクラスに預けたりしています。
猶本がいた頃は、まだ女子サッカーも発展途上だった。学校のサッカー部とクラブの下部組織としての2つの機能を併用しても通用する時代だったのです。うちは昔から中等部と高等部が一緒に練習していますし、飛び級で試合経験を積ませたりもしています。彼女はうまかったから学校のサッカー部では実力を持て余していました。これでは実力も伸びないからと、アンクラスのトップに昇格させたんです」
中学でなでしこリーグにデビューした猶本選手ですが、体格差のある中学生と社会人とでは苦労も多かったようです。サッカー環境がそろっている男子とは違い、女子がサッカーを続けるには様々な不安要素があります。そんな彼女を恩師たちはどのように支え、どう才能を伸ばしたのでしょうか。