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連載コラム 10年前

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第12回 Jリーグの常識は実は非常に恵まれている

サッカー批評誌上で2007年から5年間「哲学的思考のフットボーラー 西村卓朗を巡る物語」という連載を行っていた西村卓朗氏。現役引退後、VONDS市原の監督として新たな一歩を踏み出しました。

シリーズ:元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 text by 西村卓朗 photo by VONDS市原

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2013年10月19日 On the pitch 全国社会人サッカー選手権大会1回戦 対FC今治戦

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第12回 Jリーグの常識は実は非常に恵まれている
【写真:©VONDS市原】

 全国社会人サッカー選手権(全社)1回戦は関東リーグでの退席処分の罰則該当試合でベンチ入りはできないこととなった。

 リーグ終了後、3週間ほど準備期間があったので、そこを想定し準備を行った。スタメンまでは自分が決めることができるが、ハーフタイムの選手交代などは自分の判断を直接伝えることができない。コーチである米崎とはできる限り自分の感覚をくみ取ってもらえるように練習中、TRMから横に張り付きコミュニケーションをとるようにしていた。

 ただ実際のところ米崎は、VONDSのことを熟知し、選手とは自分よりもはるかに長い付き合いがあり、社会人経験も豊富で、人間観察、その場の洞察力はこちらが舌を巻くほど鋭いものがあったので、あまり心配はしていなかった。

 米崎は市内で本業が定時で終わるとそのままグランドに足を運び、現場を支えてくれる。週末も文字通り、身(時間、お金)を削りその場を作ることに専念してくれる。VONDSの前身である古川電工サッカー部時代からこのチームを知るまさにレジェンドだ。

 市原出身で、市原という土地、市原のサッカーへの想いが強く、その想いから日々積み重ねた時間は隠しようがない。そんな時は結果も応えてくれるものである。

 結果からいうと2-1で勝利。事前のスカウティングも役立ち、スタメン起用した選手もしっかりそこに応えてくれた。

 シーズンも終盤を迎えれば、おのずとメンバーは固定されてくるが、自分はとにかくその時に状態が良い選手を使うことを心掛けていた。それはチーム内のモチベーションを保つ上で重要なことだと選手時代から感じていたので、それをできる限り実践している。

 最終的にはやはりこちらの主観になるのだが、この後のない大一番ではリーグでは出場の少なかった岩田、尾形をスタメンで起用し、二人とも1得点ずつをあげるという結果を出してくれた。

 勝利の笛が鳴った時自分は遠くからベンチで喜ぶ選手の輪を見ていたが、すぐにコーチの米崎がこちらを見て笑顔で拳を小さく3回振ってくれた光景は今でも心に焼き付いている。

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