わずかな時間でポテンシャルの高さを見せた丸岡
キックオフを前に、両チームが試合前のウォーミング・アップに励んでいる最中、クロップもコーファス・アレーナのピッチの中に入っていた。自らが率いるドルトムントの選手達を背に、腕を組んで堂々と構えて、敵陣に睨みを利かせている。
同様の光景は、8月23日に行われたホームでの開幕戦、対レバークーゼン戦の前にも見ることができたので、クロップにとって試合前のちょっとしたしきたりなのだろう。
何があってもコイツらはオレが守り抜く――少し大袈裟かもしれないが、クロップの佇まいからは、一軍の指揮官としての思慮と覚悟がこちらに伝わってくるのである。
80分にピッチに入った丸岡は、ドゥルムからボールを受けるとモリッツら2人を交わして中央をドリブル突破する。たまらずガイスが丸岡を倒して、イエローカードを受けることとなった。
「最初は緊張していたんですけど、監督がああいったことを言ってくれたので、ちょっと自分を出せたかなっていうのもありました。ファーストプレーって大事だと思うので、ああいうプレーできて試合もいけるんじゃないかって。それも自信に繋がりました」
丸岡は10分ばかりの出場となったが、ドリブル突破に始まって、肝の据わったプレーを見せる。右のピシュチェクへシュートパス、左のインモービレへロングボールを送るなど、中盤を広く動き続けた。
最初は緊張していた丸岡から「練習でいつもやっている」プレーを引き出して、なおかつ「自信」へと繋げたのは、クロップの言葉だった。
クロップは普段から練習で見る丸岡のポテンシャルを見抜いているからこそ、気持ちの面での言葉を掛けてデビュー戦を飾る若者の背を押し、戦場へと送り出したのである。
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