意識するストライカーとしての役割
「最後のところでトラップするのか、シュートを打つのかの判断がまだまだできていない。そこの冷静な判断ができてくれば上のレベルでも、もっとゴールを取れると思います」
筆者が彼を初めて取材したのが、2011年にメキシコで行われたU-17W杯だった。当時は高い身体能力と独特のリズムを武器とし、ある意味で感性のままに躍動していた印象が強く、取材慣れしていなかったことも手伝ってか、プレーを明確に言語化することもできていなかった。
しかし、Jリーグや各年代の代表チームを通じて、観察眼や仲間との連携意識を高めていったのだろう。もちろん技術的な成長も状況に応じたプレーの幅を広げている要素だが、実戦経験を通して、周囲との連携が高まるほど、そして相手との駆け引きで優位に立つほど、得点チャンスも増える実感が強まっているはずだ。
日本人として身体的に恵まれていることは確かで、海外でも十分に通じる資質ではあるが、高いレベルに行くほどそれだけでは勝負できなくなる。年齢制限のあるアジア大会はその“序の口”に過ぎないかもしれないが、国際大会でのプレーイメージをつかむ意味でも重要な大会になる。
そしてストライカーである以上、求められるのはゴールだ。この日2得点を記録し、3試合合計で4得点。チームの勝利を前提としながら、「やっぱりディフェンスががんばって辛抱してくれたら、自分たちが点を取らなきゃいけないし、自分が点を重ねることでチームの勝利につながる」とFWの役割を認識している。
ゴールという結果を出し続けながら勝利に貢献し、先のステージに進んでいくことができるか。良い経験で終わらせず、Musashi Suzukiというストライカーの名前をアジアに知らしめる大会にしていってほしいものだ。
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