イラク戦で浮き彫りになった課題
フィニッシュに関しては「もう流し込むだけでしたね、キーパーの脇を狙って」と語る鈴木だが、そこに至る流れで「岳人が一歩前に入ってきたけど、俺のことを見ているからスルーするなと思った」という言葉の通り、迷い無く前を向いたことがGKとの1対1につながった。
後半24分の追加点は野津田からのクロスをスライディング気味のボレーで合わせたシンプルなゴールだが、「相手は引いているんですけど、クロスの時にラインが高くなることが多かったので、GKとDFラインの間は狙っていました」というイメージが実った。
こうした場面のプレーを見れば、鈴木が感覚だけでなく、周囲との連携や相手の状況をしっかりイメージに入れて動いていることは明白だが、その精度や質に成長の余地が大きくあることは本人も自覚している。
そうした課題は相手が強くなるほど露呈するものだ。実際にイラク戦は前線で孤立する時間も長い中で、タイミングよく味方と絡み、危険なフィニッシュに結び付けることがほとんどできなかった。
「プルアウェーはどの相手でも、彼らの背後に消える動きなので、もっと速くしないといけないし、強いチームにはもっと危機察知力の高い選手が多いので、そこを高めていきたい」と向上心を表す鈴木だが、フィニッシュで強く反省する場面があった。
それは後半37分ごろで、中央で前を向いた中島から浮き球の縦パスがエリア内の鈴木に通ったが、そこからシュートに持ち込む寸前で左右からDFに挟まれ、クリアされてしまったのだ。
「あの浮き球をトラップする前に、1タッチでもっとタイミングをずらして、シュートを打っても良かったかなと思いました」
これは1つの事例だが、ゴール前のチャンスは様々なシチュエーションから生まれる。そこでいかに冷静に良い判断ができるかはそのままストライカーの資質を表すもの。しかし、それは後天的に伸ばせる余地の大きい部分でもある。鈴木のように瞬間的な絵を鮮明に思い描ける選手なら、なおさらだ。