“ペップの狂気”。ブンデスを実験の場と捉える
ペップはどこかブンデスリーガを実験場としか捉えていないフシがある。かつて選手としての最晩年を過したメキシコで、師であり当時所属したドラドス・デ・シナロアの監督フアンマ・リージョの自宅で世界中のサッカーの映像を2人で分析してはスタジアムに向かい、実験を繰り返したように。
いかに負傷者が続出していたとは言え、一度もチーム練習に参加していないアロンソを、昨季リーグ戦を3位で終えたクラブとの戦いにぶっつけで先発させることは、やはり狂気の沙汰である。メキシコ西部の都市クリアカンでの実験の日々の残像は、今なおペップの頭の中に強く刻まれているのだろう。
ではペップの実験の先に何が待ち受けているのだろうか。
3バックの導入については、昨季のCLでレアル・マドリーが繰り出したようなカウンターへの対策が考えられる。同時にペップは4バックを放棄したわけでもなく、アロンソを実験したシャルケ戦では、4-2-3-1の布陣で臨んでいる。
つまり新たな選択肢を導入することで、バイエルンのサッカーをトータルで進化させようとしているのではないだろうか。
そのことを考える上で、一つ重要な言葉がある。アロンソが先発したバイエルン戦の後に、試合は欠場した内田篤人がミックスゾーンで残してくれたものだ。
バイエルンのサッカーについて、何か特別に感じるところがあれば? という問い掛けに対して、内田は次のように応えてくれた。
「ボールを持っているときのチームの、選手の動き方が徹底していると思うんだよね。上から見ていて」
ペップ・バイエルンの特徴の1つはポジションに囚われない流動性にあったが、内田の言葉を元に考えてみれば、その一見した混沌は、造られた秩序ということになる。
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