粗さはあるがEUROに向けては好スタート
長い目で見れば、怪我で戦線離脱中のロス・バークリーというトップ下候補もいる。だがリヴァプールのスターリングには、欧州最高峰のCLで磨かれる可能性という、エヴァートンのバークリーにはない今季の利点がある。
おまけに、代表でも定着が予想される中盤ダイアモンドの4-4-2で、手前にダニエル・スタリッジ、後ろにヘンダーソンという代表と同じ環境で経験を積むことができるのだ。予選を通じて代表が磨かれる例もあるが、スイスの他はサンマリノ、エストニア、スロベニア、リトアニアという「楽勝グループ」に入っているイングランドの進化は、若き主力勢のクラブでの成長に依存する部分が大きい。
とはいえ、予選は突破が全てだ。イングランドは、敗退する方が難しいと思われるグループEで、1位通過争い最大のライバルと目されるスイスに敵地で勝った。初戦で躓いて必要以上のプレッシャーを抱える事態を回避できたことから、元来は慎重な指揮官の下でも、攻撃力を意識したアプローチの継続が可能になったと言える。
もちろん、最終目標であるイングランド復興への道程は長い。現時点では、まだ弱点が見える。本職のボランチがいない中盤の守備力不足が一例。スイス戦では、リードを奪った後でも、中盤の底でウィルシャーが、その背後ではCBのフィル・ジョーンズが不用意にボールを失っていたように、ポゼッション下手も課題であり続ける。
だが、新生イングランドは前向きにスタートした。そして、3ヶ月前には、同じW杯グループステージ敗退という結果を受けて、「目標だったスペインと肩を並べた!」と、伏し目がちに苦笑するしかなかった母国民は、笑顔でEURO2016以降に目を向けられるようになった。
【了】
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