ゾーンディフェンスの対象は「人」ではなく「ボール」
改めて集団的な守備戦術であるゾーンディフェンスとは何かを記しておく必要があるだろう。
これはボールを中心にFW、MF、DFの3ラインがコンパクトに等間隔の隊列を組み、ピッチ上のスペースを消しながら、同時に、奪った瞬間にカウンターを狙う守備戦術を指している。守備をする対象は「人」ではなく「ボール」だ。相手ボールホルダーに対して、ファーストディフェンダーが激しくアプローチをかけることがまず大前提。そのアプローチをかけた味方を基準にしながら、連動してそれぞれの守備ポジションが等間隔に決まる。あくまで守備をする対象はボールだから、相手の走り出しに引っ張られて守備陣形にスペースが生まれる、という状況にはなりにくい。自分の近くの敵が走り出そうとも、ボールにプレッシャーがかかっていれば、いってらっしゃいの感覚で離してしまって構わない。最終ラインが数的不利になろうと一切関係なく、一個のボールにいかに数的優位をつくれるかを考えるのだ。
よくJリーグでも相手のサイドバックの駆け上がりに対して、サイドハーフが仕方なく追いかけて最終ラインで守備をしなくてはならない、などという状況が発生するが、それはマンツーマンの“頑張る守備”を指している。南アフリカワールドカップの日本代表の守備がまさにそれだ。しかし、この守備方法は非効率で、サイドハーフであれば最終ラインに吸収されてしまい、ボールを奪った瞬間に攻撃へ移行しようにもスタートラインがかなり後方になる。守備に追われることで体力も奪われてしまう。
当時の大久保嘉人や松井大輔がまさにそうだった。このサッカーでは未来がない、となるのも当然だ……(続きは『フットボール批評issue01』にて、お楽しみ下さい)。