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フットボールマネーを追え!【03】Jリーグが見習うべき欧州スタジアムの『おもてなし』。工夫は観客を呼び、“どんぶり勘定”はリーグ衰退を招く

シリーズ:フットボールマネーを追え! text by 小松孝 photo by Getty Images

スタジアムの“ショバ代”としてマッチデー収入の半分を消費

 1996年にアーセナルの監督に就任したアーセン・ヴェンゲルは、今季で19シーズン目を迎えるが、長期政権の理由として、監督手腕に加えて、2006年に開場した多額のスタジアム建設費用を捻出するため、例えばティエリ・アンリやロビン・ファン・ペルシーらをはじめとした才能豊かな若きタレントをしっかりと育てたうえで、高く売り、その差額を建設費用に充当するという、経営手腕も高く評価されているからだと言われている。

 ところが、セリエAのオーナーや経営陣は、練習場はともかく、スタジアムが他人の所有物のため、そうした発想をしなくてもいいのである。

しかしその反面、スタジアムの維持管理費用を含めた“ショバ代”として、マッチデー収入の推定半分を行政に支払わなければならない。

 そうしたことから、2011年に開場したユベントス自前のスタジアムについては、概算で1億5000万ユーロ(約200億円)の建設費用がかかったものの、マッチデー収入については、行政への支払い義務がなくなったことも重なり、10/11シーズンの1,110万ユーロ(15億円)から翌11/12シーズンには3,180万ユーロ(約43億円)へと、たった1年で約280%増と見違えるほど膨れ上がったのである。

 スタジアムの償却期間は、普通に考えて20年とか30年の長期に及び、原価償却費は課税対象外となる。その減価償却費や販管費(販売及び一般管理費)などをざっくり差し引いたとしても、ユベントスは、マッチデー収入として毎年、おそらく1,000万ユーロ(約14億円)もの営業利益を生み出すことに成功したというわけだ。

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