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フットボールマネーを追え!【03】Jリーグが見習うべき欧州スタジアムの『おもてなし』。工夫は観客を呼び、“どんぶり勘定”はリーグ衰退を招く

シリーズ:フットボールマネーを追え! text by 小松孝 photo by Getty Images

スタジアムビジネスが機能していないセリエA

 セリエAで古いのは、スタジアムの躯体や設備だけではなく、こうしたプリペイドカードのシステム導入なども遅れている。

 しかも、スタジアム周辺には、日本でもよく目にする露天商やハンバーガー・スタンドが数多く立ち並んではいるものの、それらはクラブの直営店舗ではないため、クラブ側の懐を潤す結果にはつながらない。

 さらに、11/12シーズンからのユベントス・スタジアムを除き、スタジアムが行政の所有物であるため、開場後も収容人数の拡張工事が行われてきてはいるものの、観客の心を引き付けるビジネスラウンジについては、ブンデスリーガとは比較にならないほど、涼しい風が吹いている。

 つまりセリエAは、スタジアムビジネスが機能していないのである。

 さらにもう1つ、セリエAのクラブ経営については、こんな側面も浮かび上がる。

 試算表がない事業は、ビジネスとは呼べない。たとえ銀行借り入れを起こさなくても、資本市場から資金を調達しなくても、事業であれば、試算表は必ず必要である。

 そのことを含めた事業計画書のことを一般企業では、『チュウケイ』と呼び、チュウケイといったら通常、3カ年中期経営計画のことを指す。

 スタジアム建設は、巨大な資金を必要とする。例えば2005年に開場したバイエルン・ミュンヘンの本拠地アリアンツ・アレーナの建設費用は3億ユーロ(414億円)を超えるとされる。

 投資したものは、必ず回収する。それがビジネスの大原則である。

 建設費用は通常、債権発行や銀行借り入れなどによって賄われる。どの国でも法人であれば決算期毎に提出が義務付けられている税務署への決算報告書のなかで、スタジアム建設費用は、減価償却費として計上される。

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