スタジアム内での飲食物はプリペイドカードを使用するイングランド
UEFA(欧州サッカー連盟)が算出する指標の1つにスタジアムカテゴリーがある。分かりやすくいうとスタジアムに対する『格付け』である。ピッチの大きさはもちろん、国際大会の基準を満たす収容人数やVIP用駐車スペースの確保、そのほか照明やメディア関連に至るまで評価項目は幅広い。
それを基準に表中のスタジアムをみてみると、ほぼすべてのスタジアムが最高位の『カテゴリー4(旧エリート)』に分類される。しかし、収容率には大きなバラつきがあることから、そのこと自体が集客に結びついているとは思えない。
プレミアリーグでは、リヴァプールのフーリガン(暴力的行為を繰り返す偏狂的なファン)が1985年に起こした、いわゆるヘイゼルの悲劇(ユベントス・ファンとの衝突により、38人が死亡。うち英国人は1人のみ)を境に、政府自らがその対策に乗り出した結果、今やフーリガンという言葉が薄れゆくなかで、ファンは恐怖心をまったく抱くことなく、安心してアンセムが聞けるようになった。
ただ、サッカーだけを取り出せば、バルセロナのような華麗なパス回しもなく、ボルシア・ドルトムントのような惚れ惚れする高速カウンターもない。イングランド代表がW杯で優勝したのは、半世紀も前の1966年のこと。
それなのに、なぜファンはプレミアリーグに足繁く通い、1スタジアム当たりの平均収容率が96%という驚異的な数値を残せるのか。
その理由として考えられるのは、潤沢な資金を背景としたスター選手の存在と、それを最大限に生かしたブランディングのうまさによるものではなかろうか。ひと言で表すならば、ビジネススキルに長けているからだと言えよう。
マッチデー収入は、チケット代のほかに試合観戦につきもののビールやコーラ、ポップコーンなどの飲食費も含まれる。その支払いには、今やプリペイドカードが使われるのが一般的だ。逆説的に言えば、現金は使えない。そのほうが支払いも楽だし、釣銭を間違える心配もない。
しかも余ったお金は払い戻すことができないため、クラブ側の純利益として計上されるか、再来場して使うしかない。