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フットボールマネーを追え!【03】Jリーグが見習うべき欧州スタジアムの『おもてなし』。工夫は観客を呼び、“どんぶり勘定”はリーグ衰退を招く

クラブ財政の主となるマッチデー収入に直結するスタジアムの『おもてなし』能力。プレミアリーグやブンデスリーガは完璧な事業計画とともに観客のニーズに応えるべく、様々な工夫や成長を続けている。その一方で、セリエAは“どんぶり勘定”によって経営を難しくさせ、リーグ自体の競争力も低下を続けている。

シリーズ:フットボールマネーを追え! text by 小松孝 photo by Getty Images

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6時間以上にもわたってサッカー漬けになれるボルシア・パルク

 ぜひ試合を見に来てください。でも見終わったら、すぐに帰って下さい。

 日本のJリーグを含めて、試合終了直後に、主催者側が観客に対して抱く素直な気持ちではなかろうか。

 欧州サッカーでも一般席に来場する観客に対しては、似たような対応である。しかしその傍らで、ドイツ・ブンデスリーガを中心に、スタジアム内に作られたビジネスラウンジでは、日本文化の真骨頂とも言うべき『おもてなし』が存分に味わえるのだ。

 一例を挙げると、ブンデスリーガの古豪ボルシア・メンヒェングランバッハ(ボルシアMG)のビジネスラウンジは、キックオフ2時間30分前から試合終了2時間後まで利用できる。

 つまり、ボルシアMGのサポーターは試合当日、ボルシア・パルクで6時間以上にもわたってサッカー漬けになれるというわけである。その多くは中高年者で、チケット代は、174ユーロ(約24,000円)から高いもので232ユーロ(約32,000円)。飲食代は、すべてそのなかに含まれる。

 ラウンジといっても、一度におよそ1,000人もの観客がテーブルに着席できる広さを誇り、アルコールと試合の興奮に身も心も真っ赤に染め上げたサポーターたちは、作りたての料理に舌堤を打ちながらサッカー談議に花を咲かせる。そこはまさに大人の社交場といってもいいだろう。

 これを単純に売上換算すると、前回の【2】で見たように、ブンデスリーガの平均マッチデー支出は約33ユーロだから、ビジネスラウンジへ1,000人の集客に成功するということは、一般客を6,000人集客することと同じ計算になる。

 観客へのこうした『おもてなし』は、どのクラブでも力を入れている施策で、それを視野に入れたスタジアム建設や修繕に積極的に取り組んでいるのが現状である。

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