戦術的コンセプトのベースの違い
「我々指導者が選手にできることは、試合で起こりうることの対策を練って試合前の段階でそれを伝えることです。もちろん、選手も試合中は自分たちで判断をして問題を解決していかないといけませんが、試合中に選手に対してチーム戦術に関するコーチングをたくさんしてもなかなか伝わりません。できるだけ試合前に共通認識を浸透させた上で、チームとして試合に臨めるかが大事ではないかと考えています」
このサンス監督の言葉だけを見れば、「試合前の準備に尽力し、試合中は選手の判断を促すだけでよい」と考えてしまいがちだが、これはあくまで選手たちが7歳から12歳までの間に戦術的なプレーコンセプトを教え込まれ、ベースがあることを前提にしている。そのベースがある中でさらに、コンセプトから外れる場合は随所に試合中に修正をしていた。
つまり、試合の中で選手個々が判断できなければ、そこはやはり教えなければいけないし、その一方ですべて教えると選手は混乱してしまうため、少しずつ基準を明確にして修正し、教え込む必要性があるということだ。7(8)人制から11人制になることでピッチのサイズが大きくなり、プレーエリアが拡大してより強いパスが必要であれば教えなければいけないし、自陣で相手を前にしてドリブルで抜こうとするのであれば、そこを修正しなければならないのである。
今大会、日本のチームは様々な対策を立ててバルセロナを苦しめた。日本人選手の個々の能力の高さ、特にボールを持った時の強さは十分なレベルにあることを証明した。その一方でバルセロナは起こった問題を試合の中で修正し、大会の中で成長していった。
しかも相手はまだチームをスタートして間もないプレシーズンの段階であり、全日本少年サッカー大会など大きな大会を終えた日本のチーム相手に優勝したのである。バルセロナ、日本のチームのそれぞれの段階を加味した上で、今大会で通用したこと、通用しなかったことをもう一度見直し、この大会の意義をしっかりと捉えていきたい。
【了】
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