埋まらない穴。攻守のバランス崩壊
さて、X・アロンソ放出については、クロースが代わりに中盤の底に入ることで、被害を最小限に食い止められるだろう。その10メートル前を本来のポジションとしているドイツ代表MFだが、UEFAスーパーカップ・セビージャ戦(2-0)、リーガ第1節コルドバ戦(2-0)では短・中・長距離のパスを織り交ぜて、早くもチームの攻撃を司った。
問題は、やはりディ・マリアが空けた穴だ。ウィングを本来のポジションとするこの選手は、ストライカーの魂を持ちながらも守備面での献身性も秀でていた。一方、ディ・マリアの売却収入とほぼ同額の8000万ユーロ(約108億円)でマドリーに加入し、“カルレット(アンチェロッティの愛称)”起用することが義務付けられるハメスは典型的な10番タイプの選手だ。
ポルトでこのコロンビア代表MFを指導したビラス=ボアスも、「彼は自由にプレーさせるべき」と話していたが、ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノが形成するトリデンテ“BBC”の後方で、攻守のバランスを取ることは難しい。
現にスーペルコパのアトレティコ・マドリー戦(合計スコア1-2で敗戦)は、ディ・マリアの重要性を改めて思い知らされるものとなった。ディエゴ・シメオネ率いるチームの堅守を最もかき乱したのは、ファーストレグの77分から出場したこのアルゼンチン代表MFであり、同選手がベンチ外となったセカンドレグでは後半にクロース&ハメスをクリスティアーノ&イスコに代え、4-3-3から4-2-4にシステムを変更して攻守のバランスが崩壊。
アントワーヌ・グリーズマンを起点としたカウンターから幾度も危機的な状況を迎えてしまった。マドリッドダービー敗戦で今季の目標とされていた“セクステテ(6冠)”を断念せざるを得なくなったマドリーだが、シメオネがファーストレグで口にした「ディ・マリアこそがマドリー最高の選手」という同胞の称賛は、アンチェロッティにとってあまりにも手厳しい皮肉となっている。