「面白い試合が観られる」。プロ興行として単純に魅力的
「ここにしかないサッカーをしよう」と選手に話す風間八宏監督の指導のもと、チームが目指してしているのは、徹底的にボールを握ってゲームを支配し、相手を攻撃し続けること。頑なポリシーを掲げる指揮官のもとで磨き上げてきたこのサッカーは、就任3年目の今季、いよいよ突き抜け始めてきたと言える。
その突き抜け方はしっかりと具現化されており、データにも反映されている。football-lab (http://www.football-lab.jp/ka-f/)によれば、1試合平均パス本数の640. 7本はリーグ1位。試合中、多くの選手が関わることで循環し続けるパスワークは実に圧巻である。
やっている選手も手応えを口にする。「今年は全然違うね。去年も良かったけど、また別の充実感がある。充実度が更新されている」と笑顔を見せるのは中村憲剛だ。
昨年の夏にはトップ下で得点を量産し「中村史上最高」を自称していたが、今年はボランチで定着。U-21日本代表・大島僚太とのコンビでチームの心臓となり、リーグ随一のパスワークを機能させている。
かといって、パスをつなぐポゼッションチームにありがちな、パスが目的化することも少ないのがこのチームの特徴だ。今季のゴール数38得点はリーグ1位。徹底的にボールを保持して、ゴールもたくさん奪う。
自陣で人数をかけて組織的な守備ブロックを形成し、相手のスペースを消す戦い方を優先するJリーグチームが多い中、この圧倒的な攻撃的なスタイルで優勝争いをしているチームは、まさに風間監督の言葉にある「ここにしかないサッカーをしよう」を体現し始めているというわけだ。
もっとも、前節のセレッソ大阪戦で4-1から試合をクローズ出来ず、結果的に5-4という撃ち合いを演じてしまうなど、チームの安定感という側面では、まだまだ未成熟な部分もある。
そういった指摘をすることは実にたやすいが、それを差し引いても、「ゴールがたくさん観られる」、「面白い試合が観られる」という要因は、プロの興行としてのコンテンツとして、単純に魅力的だ。サッカーの内容で等々力のお客が増えつつあるというのも、決して間違いではなさそうである。