「どうやってふたりともプロにするか」。出場機会の確保を最優先
松澤をユースに上げなかった判断について、当時の指導者はこう語る。
「ふたりはタイプが違いました。ナイルはビルドアップに長け、フィールドプレーヤーの感覚を持つ選手。一方、コウキの持ち味はシュートストップです。ヴェルディはつなぐサッカーを特長とし、ディフェンダーとの関係性を考えると、ナイルのほうが適している。
ユースを強くするだけなら、レベルの高いGKがふたりいたほうがいいに決まっています。でも、それでは彼らのためにならない。この年代はゲームに出ることが何より優先されます」(沖田政夫・東京ヴェルディ女子チームGKコーチ)
「そのとき僕の頭を占めていたのは、どうやってふたりともプロにするか。それぞれの出場機会の確保に加え、コウキの場合はメンタルに課題を抱えていました。
あいつ、性格がやさしいんですよ。ナイルはミスをしても淡々とやれる図太さがあるんですが、コウキは周りから文句を言われるとヘコんでしまい、プレーを乱す傾向があった。だったら、ここで外の世界を経験したほうが飛躍的に伸びるだろうと」(冨樫)
実際、ふたりの実力は伯仲しており、菜入がU-15・16の日本代表候補だったのに対し、松澤は2007年AFC U-16選手権の予選、2008年AFC U-16選手権、2009年FIFA U-17ワールドカップの日本代表に選出され、年代別代表の実績ではリードしている。