「ショックでした」。ユース昇格ならず、声を上げて泣いた晩夏の一日
東京ヴェルディのアカデミーで育ち、高校サッカーのルートからプロを目指す選手がいる。松澤香輝(早稲田大4年)。東京ヴェルディジュニア、同ジュニアユースを経て、流通経済大学付属柏高校(以下、流経大柏)に進み、早稲田大学ア式蹴球部の正GKを務める。
「ヴェルディに入ったのは小5の終わり頃です。育成部門のコーチをされていた菊池新吉さん(川崎フロンターレGKコーチ)のGKアカデミーに参加し、新小6のセレクションに合格しました。
付き合いの濃さ、一緒にいた時間の長さでいえば、相馬将夏(法政大4年)ですね。あいつがシュートを打ち、僕が止める。練習後に居残り、オフの日にもランドに行き、ふたりでひたすらシュート練習をやっていました」
遠く過ぎ去りし、晩夏の一日を振り返る。2007年、日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会で、東京ヴェルディジュニアユースは準優勝。その後、進路についての個人面談があった。そこで松澤は、当時の監督である冨樫剛一(東京ヴェルディユース監督)から、ユースに昇格させられないと告げられた。
「ショックでした。ユースに上がるのが夢だったし、昇格できると思っていたので」
通常、面談は保護者同伴だが、両親ともに都合がつかず、ひとりで臨んでいた。部屋を出た途端、涙があふれだした。練習後のロッカールームには、誰もいなかった。すでに180センチを超えていた大きな身体を震わせ、声を上げて泣いた。
いつもは自宅の方向が同じキローラン木鈴・菜入(ともに東京ヴェルディ)、高野光司(アスルクラロ沼津)と一緒に帰るのが常だったが、ひとりぼっちの帰り道だった。
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